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みなし弁済の成立要件‐「利息又は損害金として」‐ ②

2012.01.18(11:58)

最高裁平成2年1月22日第二小法廷判決の解釈として「利息又は損害金として…支払った」とは,債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償額の予定に基づく賠償金の支払に充当されることを認識していることで足り,債務者の利息又は賠償金への支払に充当する旨の指定は不要であるとする見解に立った場合,「利息又は損害金として支払った」と言えるためには,具体的にどの程度の認識(利息又は賠償金に充当されることの認識)が必要であろうか。

この点について,東京高判平成9年11月17日(金融法務事情1544号67頁)が「『利息として』又は『賠償として』支払ったと言うためには,債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償の予定に基づく賠償金の支払に充当されることを認識した上で支払うことを要するものであり,そのように認識した上で支払ったと言うためには,債務者においてATMにより弁済すれば,約定に従い機械的に利息,損害金に一定の利息,損害金,元金に充当されるという認識では足りず,具体的に一定の利息,損害金,元金に充当されるという認識を有することが必要である。」と判示していることが参考となる。

例えば,店舗等での弁済であれば,予め貸金業者から「利息,○○円,元金○○円の合計○○円です。」と口頭で告知されて債務者がこれを認識した上で支払うような場合や,ATMによる弁済であれば債務者が入金する前に「利息○○円,元金○○円,合計○○円」というような画面が予め表示されて債務者がこれを認識した上で支払ったような場合でなければ,利息又は賠償金に充当されることを認識した上で支払ったとは言い難いであろう。

これに対して,「毎月の支払の時点で直ちに具体的利息充当額を把握できなかったとしても,その支払額の中から契約で定められた利息及び計算方法により算出される額が利息の支払に充当されることを当然に認識しながら支払を行っていたものということができ,自己の自由な意思によって利息を支払を行ったものということができる」という見解がある(東京高判平成11年5月27日判例時報1679号37頁)。

しかし,この見解は明らかに前掲最高裁判例の解釈を誤ったものであるというほかない。 なぜなら,かかる見解によるならば,制限超過部分の利息又は損害金への充当を望まない債務者は,支払時に制限内の利息又は損害金を超える部分の全てについて元本へ充当する旨を指定しなければならなくならるからである。
換言すれば,債務者が「元本として」支払わない限り制限超過部分の利息又は損害金に充当される,という結論になるのであり,かかる結論は,利息又は損害金として支払わない限り元金に充当される,としている貸金業の規制等に関する法律43条1項ないし4項の趣旨及び明文の規定に反することが明白であるから,上記の見解は,前掲最高裁判例の解釈としても明らかに誤ったものであるというべきであろう。

なお,いずれにしても前記東京高判平成11年5月27日事案はいわゆる証書貸付によるものであり,予め利息額等も記載された償還表が配布されていたという事実認定の下での判断であるから,いわゆるリボルビング取引による金銭消費貸借取引による事案にはその射程は及ばないことに留意すべきである。

以上の検討を踏まえれば,少なくともリボルビング取引による金銭消費貸借において債務者の利息又は損害金に充当する旨の指定がない弁済の場合,貸金業者において予め利息又は損害金への具体的充当額を告知し債務者に認識させた上で弁済させたなどの事情がない限り,その支払は「利息又は損害金として」の支払ということはできず,みなし弁済が成立する余地は全くないというべきである。

そうであれば,かかる事案においては債務者の指定もなく,具体的充当額を認識させることもなくして受けた制限超過部分についてはみなし弁済が成立する余地は全くないのであるから,貸金業者が以後みなし弁済が成立するものとして貸付残高を計算して請求する行為は,当該超過部分について貸金債権が法律的,事実的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえて請求したものと言うべきである。
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