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個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その12)

2010.08.11(13:59)

Ⅶ 最後に
 以上,本稿においては,個別クレジット契約のクーリング・オフ及び取消権の制度について事例を参照して解説を試みた。 しかし,誌面の関係上,事例検討に必要な規定を中心とした解説となっているため,連鎖販売個人契約・特定継続的役務提供契約・業務提供誘引販売個人契約等における個別クレジットの取消しの規定に関する解説については割愛させて頂いた。
また,割販法に規定する販売業者及びクレジット業者の書面交付義務や適正与信義務については,実務上必要な知識であるにもかかわらず触れることができていない。本稿を端緒としてこれらの規定についても確認いただければ幸いである。


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個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その11)

2010.08.10(09:13)

4 前述のとおり,本事例では,Y社の販売員により販売契約の重要事実について不実の告知がなされ,購入者であるAがこれを事実であると誤信して,販売契約及びクレジット契約の申込みを行っているので,特商法に基づいて販売契約を取消すこと及び割販法に基づいてクレジット契約を取消すことが可能であると思われる。

 特商法に基づいて販売契約を取消すのみでは,別個の契約であると解されているクレジット契約は存続し続けることとなり,既払金12万円については有効な弁済としての効力を失わないため,購入者Aは,Z信販に対してその返還を請求することができない。ただし,支払停止の抗弁を主張することは可能である。

 また,割販法に基づいてクレジット契約を取消すのみでは,販売契約は存続し続けることになり,購入者AはY社に対する代金債務の支払を免れない。したがって,一括弁済する資金が十分にあって,Z信販に対する割賦手数料の支払を免れさえすれば良いというような場合でなければ,クレジット契約のみを取消す意義は乏しいと思われる。

 通常は,特商法に基づく販売契約の取消しと併せて割販法に基づくクレジット契約の取消しを行うこととなろう。この場合には,割販法35条の3の13第2項乃至4項に規定する清算規定が適用され,購入者Aは,Z信販に対して,立替払いの求償を求められることなく,既払金12万円の返還を請求することができる。

 割販法に基づくクレジット契約の取消しについては,クレジット契約のクーリング・オフに定めるようなクレジット業者から販売業者への通知の規定(割販法35条の3の10第4項)や,クーリング・オフ連動のような規定(割販法35条の3の10第5項)は存在しないので,販売契約等の不実告知の取消しの意思表示は別途行う必要がある。

 なお,クーリング・オフの規定とは異なり,クレジット契約取消し時において,販売契約が「現に効力を有する」ことは要件とされていないため,どちらを先に取消したとしても上記の清算規定が適用される。ただし,併せて個別クレジット契約のクーリング・オフの通知を行う場合には,販売契約の取消しよりもクーリング・オフの通知を先行させなければ,クーリング・オフ連動の場合の清算規定が適用(少なくとも直接適用)されないので注意が必要である。



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個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その10)

2010.08.09(09:28)

3 条文上クーリングオフ・連動及びその場合の清算規定が適用されるためには,個別クレジット契約のクーリング・オフ時において販売契約等が「現に効力を有する」ことが必要である。このため,条文上の解釈として,①販売契約とクレジット契約が同時にクーリング・オフされた場合,②販売契約が先にクーリング・オフされ,その後にクレジット契約がクーリング・オフされた場合の効果が問題となる。

 経済産業省は,①について,「現に効力を有する」に含めて考えることができ,クーリング・オフ連動が生じると考えることができる,②について,どちらの契約を先にクーリング・オフしたかによって清算関係が大きく異なるとすれば混乱を招くことになりかねない,として,クーリング・オフ連動の場合の清算規定を類推適用すべきものと考えられる,との見解を示している(経済産業省商務情報政策局取引信用課編『平成20年版割賦販売法の解説』社団法人日本クレジット協会200頁,202頁)。

 しかし,かかる見解が裁判上必ず採用されるかは現時点において不明であり,我々が実務家として(代理人として)クーリング・オフの通知を行う場合には,クレジット契約のクーリング・オフのみを行使する方法が無難である。もっとも,実務においては,クーリング・オフのみならず,販売業者に対しては,特商法に基づく取消し,過量販売解除,消費者契約法に基づく取消し,錯誤無効等の主張を,クレジット業者に対しては,割賦販売法に基づく取消し,支払停止の抗弁等,様々な主張を複合的に行なう場合も少なくない。

 したがって,このような場合においては,クレジット業者に対する通知が到達したことを確認した後に,販売業者等に通知を発送する,あるいは,停止条件を付した通知を行なうなどの工夫を試みることも考えるべきであるかもしれない。



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個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その8)

2010.08.04(13:34)

Ⅴ 割賦販売法に基づく取消権(割販法35条の3の13)

1 適用対象取引 
個別クレジットであって,これに対応する販売契約等が特定商取引法5類型の取引に該当する場合が適用の対象となる。

2 適用要件
 販売業者等が訪問販売に係る個別クレジット契約の勧誘に際して,①クレジット支払総額,②クレジットの各回の支払額並びに支払時期および方法,③商品の種類・性能・品質等(役務の種類及び内容),④商品の引渡時期,⑤クレジット契約及び販売契約等の申込みの撤回又は解除に関する事項(クーリング・オフを含む),⑥クレジット契約・販売契約等に関する事項であって,購入者等の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき不実告知,又は①から⑤につき故意の事実不告知があり,購入者等がその告げられた内容につき事実と誤認し又は事実が存在しないと誤認してクレジット契約の申込みまたは承諾の意思表示をした場合に,個別クレジット契約を取消すことができる。

 なお,取消権は,追認できるときから6月間行わないときは,時効消滅し,クレジット契約の時から5年経過したときも同様とされている。

3 効果
 クレジット契約が遡及的に無効となる。その結果,クレジット業者が立替払をしている場合には,購入者はクレジット業者に対して立替払金の相当額を返還する義務が発生し,一方,クレジット業者は購入者等に対して既払金を返還する義務が発生する。
 なお,クレジット契約のみを取消したとしてもクーリング・オフのような連動効はないので,販売契約等に係る代金債務は消滅するものではない。

 もっとも,クレジット契約が取消されるときは,販売契約等についても特定商取引法に基づく取消権が行使されたり,その他の事由によって無効とされる場合が多いものと考えられる。改正割販法は,このような場合の清算関係について学説・判例上確立したものがないため,その法律関係を明確化するため清算規定を設けている(割販法35条の3の13第2項~4項)。

 清算規定の内容は,次のとおりである。
①クレジット契約を取消し,かつ,販売契約等が取消しその他の事由により無効である場合に,クレジット業者は
,販売業者等に支払済みの商品等の代金等を購入者等に請求することができない。

② ①の場合に,販売業者等は,受領済みの商品等の代金等をクレジット業者に返還しなければならない。

③ ①の場合に,購入者等は,クレジット業者へ既払金の返還請求をすることができる。

その他,クレジット契約の取消しは,善意の第三者に対抗することはできない旨の規定,クレジットの契約の取消しの規定は,民法の詐欺,強迫の規定の適用を妨げるものではない旨の規定が置かれている(同条5項,6項)。



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個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その7)

2010.08.03(17:56)

なお,販売業者等やクレジット業者が,クーリング・オフに関する事項につき不実のことを告げる行為をしたために購入者等に誤認が生じた場合や,クーリング・オフを妨げるために威迫行為を行なった場合は,これらの者が,改めてクーリング・オフできる旨等を記載した書面(割販規85条1項~3項・86条1項~3項)を交付し,かつ,当該購入者等が当該書面を見ていることを確認したうえで,クーリング・オフの行使期間や効果等を告げなければ,クーリング・オフ期間は起算されない(割販規85条4項・86条4項)。






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資料

  1. 個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その12)(08/11)
  2. 個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その11)(08/10)
  3. 個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その10)(08/09)
  4. 個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その8)(08/04)
  5. 個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その7)(08/03)
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