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武富士役員の責任追及訴訟についての雑感

2013.05.21(10:47)

 広島地方裁判所は、被告らに「引き直し計算を行うべき義務」がないとして、原告の請求を棄却しています。

  しかし、裁判所は、この「引き直し計算を行う義務」の存否を問う前に検討すべきことがあるのではないでしょうか。

 武富士は、通常、顧客に対する貸付金について、利息制限法所定の利率を超過する利率(以下、「制限超過利率」という)により利息及び貸付残高を計算していましたが、そのような取扱いをするのであれば、貸付金に対する各弁済がそれぞれ貸金業規制法43条1項所定の要件を充足するものであることを確認する体制が構築されていたか否かを検討すべきだと思うのです。

 そもそも、貸金業者は、貸金業規制法3条所定の登録を受けているとしても、顧客に対する貸付金について、利息制限法所定の利率(以下「制限利率」という)の範囲内でその利息及び貸付残高を計算しなければならず、原則として、制限超過利率によりその利息及び貸付残高を計算することは許されないのであり、貸付金について制限超過利率により利息及び貸付残高を計算することができるのは、貸金業規制法43条1項所定の要件を充足するという極めて例外的な場合のみです(これは最高裁判例により確立された法理です)。

 したがって、貸金業者が制限超過利率により利息及び貸付残高を計算するのであれば、貸金業規制法43条1項所定の要件を充足するか否かを確認しなければならないのであり、当該貸金業者の役員は、かかる確認ができるような体制を構築しなければならないと思います。

 そうでなければ、本来であれば制限利率で計算すべきところ制限超過利率で計算してしまう誤りを見逃してしまい、ひいては、貸金業規制法18条に規定する書面に記載すべき「当該弁済後の残債務の額」につき、虚偽の記載をしてしまうこととなり、また、同法19条の帳簿の記載事項としての「当該弁済後の残債務の額」が虚偽のものとなってしまうこととなります。

 そして、これらに虚偽の記載をすることは罰則をもって禁止されている貸金業法の規定に違反するものですので、役員は会社をして「法令違反行為」をさせることとなり、任務懈怠責任を問われることになるからです。
 貸金業者は、原則として、制限利率内の利率で計算しなければならないのですから、制限超過利率で計算したことの是非を問う前に、「引き直し計算を行う義務」を検討するというのは、原則と例外が逆転した議論であり、本末転倒ではないかと思うわけです。
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未払賃金請求訴訟/立証の方法(その1)

2010.08.18(18:41)

未払賃金請求の請求原因事実は,以下のとおりである(山口幸雄・三代川三千代・難波孝一編「労働事件審理ノート」判例タイムズ社82頁)。

① 雇用契約の締結
② 雇用契約中の賃金額に関する定め
③ 請求に対応する期間における労働義務の履行
④ 毎月の賃金の締日と支払日

さて,これらの請求原因事実に対する認否について,全て否認された場合,原告としてはどのような訴訟対応をすればよいだろうか。

労務管理の杜撰な会社に対する請求ほど,労働者の手持ち資料が少なく苦労することが多い。

私なりに文書提出命令の申立を利用した立証方法を検討してみたいと思う。

つづく・・









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個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その9)

2010.08.05(09:33)

Ⅱ 事例
A(72歳女性)宅に,平成21年12月1日,寝具類の販売を目的とするY株式会社の販売員が訪ねてきた。AはY社の販売員より,ただのポリエステルの布団であるにも関わらず,腰痛改善効果があると虚偽の事実を告げられ,これを事実であると認識し,Y社の販売員が所持していた「ショッピングクレジットお申込み」と題する書面に,署名押印して,同社の布団(販売価格65万円)を購入するとともに,同代金につき,Z信販のクレジットを組んだ(支払総額80万円,毎月2万円の40回分割払い)。
6ヵ月後,Aは,購入した布団には腰痛改善効果がないもので,Y社の販売員に騙されたことを知った。Y社は,代表者が行方不明であり事実上倒産の状態にある。Aは,Z信販からクレジットの残額68万円の支払請求を受けている。


Ⅵ 事例検討と実務上の注意点
1 事例では,Y社の販売員により販売契約の重要事実について不実の告知がなされ,購入者であるAがこれを事実であると誤信して,販売契約及びクレジット契約の申込みを行っているので,不実告知による取消しを検討することになるが,立証の容易性及び法律効果の観点からすれば,先ず販売契約やクレジット契約のクーリング・オフが可能か否かを検討する方が賢明である。

2 事例では詳細が不明であるが,「ショッピングクレジットお申込み」と題する書面が交付されていると考えられるので,その書面の記載事項をチェックして,販売契約書面(特商法4条,5条)及びクレジット契約の申込時書面(割販法35条の3の9の1第1項)の記載要件(特に重要事項について)を充たすか否かを検討し,また,後にクレジット業者から交付された書面がある場合には,クレジット契約の契約時書面(割販法35条の3の9の1第3項)の記載要件(特に重要事項について)を充たすか否かを検討し,その結果を前記の図表に照らして,特商法・割販法に基づくクーリング・オフの可否を判断されたい。なお,クーリング・オフの起算点に影響を与えるクーリング・オフ妨害に該当する事実の有無等についても確認する必要があることは言うまでもない。

  割販法に基づいて個別クレジット契約がクーリング・オフできる場合には(図D,H),クーリング・オフ連動及びその清算規定が適用され,購入者であるAは,Z信販に対して,立替払いよる求償を求められることなく,既払金12万円の返還を請求することができることとなる。割販法に基づくクーリング・オフができない場合でも,特商法に基づくクーリング・オフが可能であれば,Z信販に対して,支払停止の抗弁を主張することができる(図E~H)。なお,Y社が社団法人日本訪問販売協会の会員であった場合には,救済給付金の交付を受けられる場合がある(特商法29条の2第1項)。


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  1. 武富士役員の責任追及訴訟についての雑感(05/21)
  2. 未払賃金請求訴訟/立証の方法(その1)(08/18)
  3. 個別クレジット契約のクーリング・オフと取消権(その9)(08/05)